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第3回 小売・消費財産業
販売促進費に関する論点

Q2-1:
当社では、販売促進プログラムとして、卸売業者あるいは小売業者等との合意に基づき、当該業者の当社商品購入に関するボリューム・リベートの供与あるいは当該業者が保有する自社在庫(いわゆる流通在庫)に関して直近の卸売・小売価格の値下がり分の補償を行っていますが、当該リベートや補償費を販売促進費として販売費および一般管理費に計上することは認められますか?

(設例)
我が国の一般消費財の流通・販売の商取引において、販売促進プログラムあるいはチャネル・マーケティング・プログラム等として、卸売業者あるいは小売業者との契約・合意等に基づき、値引、割引、リベート、チャージ・バック、在庫補償費、販売促進費、販売助成費・協賛金等の様々な名目で、卸売・小売業者に対して便益を供与する取引慣行があります。これらのプログラムの一部について、提供した便益を販売促進費として会計処理する会計慣行が認められますが、IFRSでは顧客(卸売・小売業者)に対する便益の供与に関して、販売促進費として処理することは認められるでしょうか。

A2-1:
卸売業者あるいは小売業者等に対する便益供与取引に関して、販売済み商品の販売価格の修正あるいは売上代金の一部返金としての性格を否定可能な例外的な場合を除き、一般的には売上高の減額として処理すべきと考えられます。

(解説)
IAS18号では収益とは、企業が自己の計算により受領したか、または、受領しうる経済的便益の総流入だけを含むものとされており(8項)、収益は受領した、または、受領可能な対価の公正価値(企業が許容した値引きおよび割戻しの額を考慮後)により測定されなければならないとしています(9項、10項)。卸売業者あるいは小売業者等の顧客に対する便益の供与については、その性格について多様性が存在しますが、販売価格の一部減額あるいは売上代金の一部返金という性格を有する限り、つまり卸売業者あるいは小売業者等における販売促進費等の経費の補填であることを明確に立証し得るような例外的な場合を除き、売上高の減額として処理すべきであると考えられます。
なお、卸売業者あるいは小売業者との契約・合意とは、書面の契約書のみならず、過去からの商慣習や口頭による事実上の合意も含まれる点に留意が必要です。

また、便益を受取る側である卸売業者あるいは小売業者側では、その性格が上記のように商品購入価格の修正としての性格を有するものであれば、収益としての計上ではなく、売上原価の減額として処理すべきであると考えられます。

卸売業者あるいは小売業者との間で行われる販売促進取引の代表例と会計処理は下記に記載のとおりです。

在庫補償

卸売業者あるいは小売業者からの返品を避ける目的で(返品コストとの対比に基づき)、当該業者が保有する在庫(いわゆる流通在庫)に対して直近の卸売価格あるいは小売価格に基づく業者マージンを補償するプログラムを言い、「マーク・ダウン補償」、「プライス・プロテクション」等と呼称されます。一般的には、補償額あるいは補償見込み額を売上高より控除することになると考えられます。

ボリューム・リベート

卸売業者あるいは小売業者による対象商品購買量(金額)あるいは対象商品販売量(金額)に応じて算定され、業者に対して支払われるリベートあるいは事後値引を言い、「目標達成型リベート(値引)」等と呼称されます。一般的には、支払い額あるいは支払い見込み額を売上高より控除することになると考えられます。
なお、旧商品の在庫一掃を目的として、返品権無しで販売する一方で、卸業者あるいは小売業者による対象商品購買量(金額)の一定割合をリベートの名称で支払うことを約定する場合(いわゆるクローズ・アウト・フィー)もボリューム・リベートの類型となります。

共同販売促進キャンペーン

メーカーと小売業者との共同で、一定のキャンペーン期間において特定商品の販売に関して、小売価格と卸売価格をそれぞれキャンペーン価格まで一定の率でディスカウントし、両者で負担するような取引については、メーカー側で卸売価格のキャンペーン値引額あるいはキャンペーン期間中における値引見込も額を売上高より控除することになると考えられます。

現金割引(早期回収値引)

売上代金の早期回収による割引についても、一般的には売上高より控除することになると考えられます。

Q2-2:
上記で卸売業者あるいは小売業者等に対する販売促進活動に関連する便益供与取引に関しては、一般的に便益の実績金額あるいは見積もり額を売上高より控除すべきことを理解しましたが、合理的な見積もりが困難な場合には、どのように会計処理すべきでしょうか?

A2-2:
引渡し済み商・製品に対する将来の値引額あるいは割戻額を合理的に見積もることができるまで、当該商・製品の売上高を認識することはできないと考えられます。

(解説)
IAS18号では、収益の額を信頼性をもって測定できることを収益認識要件の一つとして求めていることから(14項)、引渡し済み商・製品の売上高より控除すべき値引・割戻金額を当該商・製品の売価を引渡し時点において合理的に見積もることが出来ないということは、当該商・製品の売価を信頼性をもって測定できないということになり、引渡し時点における収益の認識は認めらず、合理的に見積もることが可能になった段階で収益として認識されることになります。

特に流通在庫に関連して算定される便益の供与(在庫補償、目標達成型リベート等)に関しては、その将来の便益供与金額を合理的に見積もるためには、契約・合意の対象となる流通在庫残高数量(金額)を商・製品区分毎に把握する体制・システム等、ならびに卸売・小売価格の推移および卸売・小売業者側での購買・販売予測を可能とする過去の実績等の存在が引渡し時点での収益認識のための必要条件になると考えられます。

Q2-3:
(クーポン) 当社は一般消費財の小売業を営んでいます。販売促進活動の一環とし使用期間限定のディスカウント・クーポンを不特定多数の顧客に対して配布することがありますが、クーポンの配付時および使用時の会計処理はどのようにすべきでしょうか?

(設例)
ケース1.衣料品の小売を営むA社は、新規の販売促進キャンペーンの一環で、雑誌(全国紙)において割引クーポン(全販売店舗共通で、1,000円以上をお買い上げ頂いたお客様に対して代金の5%をディスカウントするもの)を掲載した。

ケース2. ピザ・レストランを営むB社は、新規顧客の開拓を目的とする新規の販促キャンペーンの一環で、B社が運営する全てのレストラン共通で使用可能なクーポン(メインの料理コースを御注文頂いたお客様に対してデザートを一品無料で提供するもの)を配付した。メイン・コースの平均料金および平均原価はそれぞれ4,000円および3,000円であり、デザートの平均料金および平均原価はそれぞれ1,000円および500円である。

A2-3:
ケース1については、クーポン配付時においては何ら会計処理(引当処理)は起こらず、顧客がクーポンを使用した時に、お買い上げ商品代金の値引きとして処理することになります。
ケース2については、同様にクーポン配付時においては何ら会計処理(引当処理)は起こりませんが、顧客がクーポンを使用した時に、クーポンの対象となるデザートの原価を売上原価として処理することになります。

(解説)
IAS18号では収益とは、企業が自己の計算により受領したか、または、受領しうる経済的便益の総流入だけを含むものとされており(8項)、収益は受領した、または、受領可能な対価の公正価値(企業が許容した値引きおよび割戻しの額を考慮後)により測定されなければならないとしています(9項、10項)。
経費については、その機能・性質に応じて売上原価、販売費および管理費に区分されることになります(IAS1号88項)。
ケース1の場合には、個別店舗・商品の拡販を目的とするというよりは、全社的な拡販を狙った売価値引と同様の機能・性質を持つ施策であることから、クーポン使用時に売上高から控除すべきものと考えられます。なお、雑誌掲載にかかわる広告費用については、別の取引として、雑誌の発刊時点で費用処理されることになります。

一方で、ケース2の場合には、商品の無償提供を内容とするクーポンは、各店舗での新規顧客の開拓を主たる目的とした販売促進施策であることから、無償で提供されるデザートの原価(500円)はメイン・コースの売上創出のためのコスト(売上原価)として処理されることになると考えられます。したがって、クーポン使用時に売上高4,000円および売上原価3,500円(メイン・コース原価+デザート原価)が計上されることになります。
なお、不特定多数の顧客に販売促進目的で無償配布するようなプロモーション・マテリアルについては、購入時に販売費として処理することになると思われます。

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