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第2回 自動車産業
収益認識に関する論点

Q1-1:
収益を陸運局への新車登録を行った時点で認識する「登録基準」は認められますか?

(設例)
当社は、自動車メーカーから車両を購入し、顧客に対してこれを販売しています。車両が自動車メーカーから届き、必要な整備、点検を行い、陸運局へ顧客を所有者として車両登録を行います。その後、実際に顧客へ納車しますが、顧客の事情等から登録日から実際の納車日まで数日、場合によっては数週間のタイムラグが出ることもあります。自動車メーカーからの納品後、顧客への納車までの期間に係る損害保険の保険料は当社が負担しており、保険事故発生時の受取人も当社になっています。また、顧客との販売契約上、当社は車両を完全な状態で顧客に引き渡す義務を負っている旨が明記されています。納車後に車両が返品されることは基本的にありません。
現在、当社は陸運局への登録日に収益を計上する「登録基準」を採用しています。IAS18号の基準に照らした場合、これは認められるでしょうか。

A1-1:
通常、事例のような場合、登録時点で収益を認識することはできないと考えられます。

(解説)
第1回の製造業一般でも取り上げたとおり、日本では、企業会計原則において収益の認識は実現主義によることが示されていますが、収益に関する包括的な会計基準は存在しません。日本では車両の販売に関して、陸運局への車両登録時にユーザーが所有者として登録されるため、車両の所有権がユーザーに移転した時点で収益を計上する「登録基準」によって収益認識している会社が多いと思われます。

IAS18号の収益の認識要件のうち、「財の販売」に関する要件を検討すると、IAS18号14項では、財の販売に係る5つの収益認識要件として以下のように規定しています。

14.物品の販売からの収益は、以下の条件すべてが達成されたときに認識しなければならない。

  • (a)物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値を企業が買い手に移転したこと
  • (b)販売された物品に対して、所有と通常結びつけられる程度の継続的な管理上の関与も実質的な支配も企業が保持していないこと
  • (c)収益の額を、信頼性をもって測定できること
  • (d)その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
  • (e)その取引に関連して発生した又は発生する原価を信頼性をもって測定できること

「登録基準」による収益認識について検討すると、(a)の条件が達成されているか否かが問題となります。陸運局への車両登録を行った場合に、現金販売の場合には確かに法的な所有権はユーザーに移転していますが、納車までの付保の状況や顧客との契約関係等から考えると、本事例の場合には所有に伴うリスクがユーザーに移転していると考えることは困難な場合が多いものと考えられます。例えば、陸運局登録後の車両を保管していた自動車販売会社が当該車両を火災等によって焼失した場合に、納車を受けていないユーザーが車両の損失を負担することは現実的には考えられず、また、販売契約上の義務も満たしていないことになります。さらに、ユーザーが自動車販売会社に登録日から納車日までの保管手数料を支払う実務慣行もありません。こうした事実は、登録後納車までの期間の車両在庫保有に伴うリスクをビジネスモデルとして自動車販売会社が負担していることを示していると考えられます。

したがって、現金販売の場合、登録時点においては、所有に伴う重要なリスクがユーザーに対して移転している状況にはないと考えられ、物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値が自動車販売会社から、ユーザーに対して移転したと考えられるのは、登録後の実際の納車の時点であると考えられます1 2

1 : 割賦販売等の場合で、契約上、ユーザーが支払を完了するまで自動車販売会社が所有権を留保する場合があります。IAS18号では、この所有権留保条項はそれが単なる自動車販売会社の債権担保目的であれば収益認識の検討上必ずしも考慮しなくても良いとされています。したがって、この場合であっても、収益の認識は所有に伴う重要なリスクがユーザーに移転する時点、すなわち、一般的には、現金販売の場合と同様にユーザーへの納車時点となるケースが多くなるものと考えられます。
2 : 納車時点で収益を計上する場合、ユーザーによる車両受領証の入手など顧客への納車の事実を示す客観的な証憑の入手といった手続きが(これまで行われていない場合には)必要となるものと考えられます。

Q1-2:
自動車販売会社への販売報奨金を販売費及び一般管理費に計上することは認められますか?

(設例)
自動車メーカーが販売数量、販売価格等さまざまな契約条件(算定根拠)により、販売会社に対して販売報奨金を支払う取引があります。
現在、当社ではこの販売報奨金について、販売手数料として販売費及び一般管理費に計上していますが、IAS18号の基準に照らした場合、このような販売報奨金の会計処理について変更が必要でしょうか。

A1-2:
販売報奨金の性格が車両販売価格の修正としての性格を有するものであれば、売上高の減額として処理すべきと考えられます。

(解説)
IAS18号では収益とは、企業が自己の計算により受領したか、又は、受領しうる経済的便益の総流入だけを含むものとされており(8項)、収益は受領した、又は、受領可能な対価の公正価値(企業が許容した値引き及び割戻しの額を考慮後)により測定されなければならないとしています(9項、10項)。販売報奨金(リベート)については、その性格について多様な理解が存在しますが、販売報奨金プログラムが当事者間で合意されており、車両の販売価格の設定において当該プログラムが実質的に考慮されていたのであれば、当該販売報奨金は実質的には、車両の販売価格の修正としての性格を有するものであるため、売上高の減額として処理すべきであると考えられます。

また、販売報奨金を受取る側である販売会社では、報奨金の性格が上記のように車両購入価格の修正としての性格を有するものであれば、収益としての計上ではなく、売上原価の減額として処理すべきであると考えられます。

なお、車両の販売時点において、当該車両に関して将来発生する販売報奨金については、見積計上が必要であり、その見積ができない場合には、上記(c)の要件を満たさないため、販売時において収益計上することができないという点も留意が必要です。

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