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第6回 連結会計<組成された企業>(2010年3月までの動向)

1.連結プロジェクトの経緯

本連載は,主にIASB及びFASB合同会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,第3回「連結会計」に引き続き,連結に関するプロジェクトの動向について解説します。

連結会計は,2003年6月にIASBのアジェンダに加えられ,IAS第27号「連結及び個別財務諸表」(以下,「IAS第27号」)及びSIC第12号「連結―特別目的事業体」(以下,「SIC第12号」)の置き換え,すべての事業体に適用可能な支配モデルの設定並びに連結及び非連結企業に関する開示の改善を目的としてプロジェクトが開始されました。そして,2008年12月に公開草案第10号「連結財務諸表」(以下,「ED10」)が公表され,現在これについてIASB及びFASBの両審議会が合同で討議を行っています(本稿では,以下,「企業」は「事業体」と同義として使用するものとする)。

ED10では,支配について「報告企業が,自らのためにリターンを生み出すように他の企業の活動を指図するパワーを有している場合,当該報告企業は他の企業を支配している」と定義しており,これが,ED10公表後のIASBとFASBの会議においても仮決定されています。また,ED10では,「他の企業の活動を指図するパワー」の評価において,議決権又はその他のアレンジメントを有している場合と,組成された企業(structured entity)の場合に分けて取り扱いが示されています。議決権又はその他のアレンジメントを有している場合の評価に関する議論は,第3回で解説しましたので,今回は,組成された企業について,2010年3月までの議論を紹介します。

2.ED10において示された「組成された企業」の支配の評価

ED10では,IAS第27号とSIC第12号の支配モデルを統一することを目的とするために,SIC第12号における「特別目的事業体(special purpose entity)」の代わりに類似した特徴を有する事業体を称する用語として,「組成された企業」が登場しています。ED10では,「組成された企業」を,「議決権又はその他のアレンジメントにより,その活動が指図されない程度まで,活動が制限されている企業」と定義し,その支配の評価にあたっては,当該企業のリターンがどのように分配され,かつ,当該リターンに影響する企業の活動がどのように意思決定されるかについて,以下のポイントを含むすべての事実及び状況を考慮して検討する必要があるとしています。

(1)組成された企業の目的及びデザイン

成された企業の目的及びデザインを理解することは,当該企業の活動がどのように指図され,リターンが投資参加者間でどのように分配されるかを評価するのに有用であるとしています。

(2)組成された企業に対する関与から生じる報告企業へのリターン

報告企業が,組成された企業にとって潜在的に重要なリターンの変動性にさらされており,そのエクスポージャーが他のいかなる当事者よりも大きい場合には,当該報告企業が組成された企業の活動を指図するパワーを有している可能性が高いとしています。

(3)組成された企業の活動,並びに当該活動を指図する戦略的な営業及び財務の方針が事前に決定されている程度

活動が制限されている企業に対する支配は,制限された活動がどのように指図されているか,及び当該企業から得られるリターンがどのように分配されるかによって決定されるため,報告企業は,当該リターンを変動させる活動が何であるかを識別し,自身が当該活動を指図するパワーを有しているかどうかについて検討することが必要になるとしています。また,組成された企業の活動が,事前に決定された戦略的な営業及び財務の方針によって指図される場合には,事前に決定された方針により,報告企業に活動を指図するパワーが与えられることもあるとしています。この場合の事前に決定された方針とは,予想される事象や状況に対応して取るべき行動を特定したものが想定されています。

(4)関連するアレンジメント

報告企業は,関連するアレンジメントに基づき組成された企業の資産の管理方法について指図する能力を有することによって,組成された企業の活動を指図するパワーを有しているとしています。

(5)制限された,又は事前に決定された戦略的な営業及び財務の方針を変更する報告企業の能力

例えば,報告企業が,組成された企業を解散する権利,もしくは企業の定款を変更する権利(又は変更を拒否する権利)を有することによって,当該企業の活動を指図するパワーを有している場合があるとしています。

(6)報告企業が他の当事者の代理人として行動するか,又は他の当事者が報告企業の代理人として行動しているかどうか

報告企業が,他の当事者(依頼人)の代理人として組成された企業の活動を指図することができるとしても,報告企業の行動は当該他の当事者との契約等により規制されており,当該他の当事者の利益の最大化のための行動であることから,代理人である報告企業が当該組成された企業の活動を指図するパワーを有していることにはならないと考えられます。逆に,報告企業が依頼人の立場である場合には,代理人を介して組成された企業の活動を指図するパワーを有している可能性があると考えられます。

3.3月のIASB及びFASBによる「組成された企業」に関する議論

(1)「組成された企業」に関する追加的ガイダンスの取り扱い

ED10に対するコメントでは,ED10で示された組成された企業の定義について,結果として基準において議決権によって支配される企業とは別の企業の分類(subset)を作ることになり,当該プロジェクトの当初の目的であった「連結に関する単一の基準書」の設定を達成できないとする反対意見や,組成された企業に関しても,個別のガイダンスによるのではなく,連結に関する単一の包括的なガイダンスによる対応を求める意見が多く寄せられました。

これに対し,IASBの一部のスタッフは,組成された企業では議決権によって支配される企業とは異なった運営が行われており,一般的には議決権による活動の指図は行われていないため,現行の実務では当該企業に対するパワーをもたらす持分を識別することができないことを理由に多くの報告企業が組成された企業を連結していないとして,組成された企業の定義と報告企業が組成された企業に対して持分を有しているかどうかを識別するための詳細な追加的ガイダンスが必要だとしています。

また,当該スタッフは,組成された企業の支配を評価する場合には,議決権による支配の評価ガイダンスを適用できないことを明確にするために,議決権で支配されている企業に関するガイダンスとは別のガイダンスを示すことが重要だとしています。そのようなガイダンスがなければ,報告企業が議決権による支配の評価ガイダンスを根拠にして組成された企業を支配していないと主張し,結果として不適切な連結の範囲を決定する可能性があることを懸念しています。ただし,彼らは,組成された企業を識別するために提案する追加的ガイダンスは,決して報告企業が組成された企業を支配しているかどうかを決定するための個別のガイダンスとして規定するのではなく,あくまでも,包括的な支配に関する原則を適用する上でのガイダンスとして規定するものであると強調しています。

以上のように,一部のスタッフは包括的な支配モデルを1つにすることが理想的であるとする一方で,現実的には,関係者が追加的なガイダンスなしには包括的な支配モデルを首尾一貫して適用することはできない可能性があるとして,実務に対する配慮の必要性を示しています。そして,米国基準の変動持分事業体に関する基準(Topic 810)における「組成された企業」の定義を例に示し,当該ガイダンスが米国の実務において十分に機能していると主張して,追加的ガイダンスの有用性を唱えています。

この点について,3月のIASB及びFASBの合同会議では,ある程度のガイダンスは必要なものの,詳細な組成された企業に関する規定を基準に取り入れることはかえって組成された企業創出の「ロードマップ」になるのではないかといった懸念も表明された模様です。その結果,当合同会議では,組成された企業に関する記述を最終基準(FASBの場合は公開草案)に含めるものの,当該記述には現行の米国基準のガイダンスの一部のみを取り入れることを仮決定しました。

(2)代理人関係

ED10では,代理人関係についても取り上げています。現行のIAS第27号及びSIC第12号において代理人を介して保有する持分の取り扱いについて明確に規定していないために,実務において異なる取扱いが見られるとして,代理人関係に関する原則の導入について検討しています。ED10では,代理人を「契約もしくは法律によって他の当事者(依頼人)のために行動することが求められるもの」とし,代理人のパワーは依頼人の便益のためにのみ使用するように制限されており,かつ依頼人が代理人を排除することにより他の企業の活動を直接指図するパワーを行使できることから,代理人は支配を有することにはならないとしています。さらに,IASBのスタッフは,その後の検討において,IAS第24号「関連当事者についての開示」で規定される関連当事者やその他の当事者についても,当該当事者が他の企業への関与に関連して報告企業のために行動する場合には,報告企業との関係は非契約による代理人関係に当たると考えています(つまり,当該当事者が他の企業を支配している場合には,報告企業は当該他の企業を連結する)。

これらについて,IASB及びFASBは,3月の合同会議において,以下の仮決定をしています。

①代理人関係について

管理される企業の意思決定者が代理人と本人(依頼者)のいずれであるかを評価する場合,意思決定者,管理される企業及び当該企業のその他の持分保有者との関係を総合的に評価することが必要であり,以下の要因のすべてについて検討することが必要であるとしています。

a.意思決定権限の範囲
b.他の当事者が保有する権利
c.意思決定者の報酬
d.意思決定者が当該企業に対して保有する他の持分により,意思決定者が
さらされているリターンの変動性に対するエクスポージャー

②関連当事者について

支配を評価するにあたっては,報告企業の関連当事者との関係について,当該関連当事者が報告企業のために行動する場合には,当該関連当事者の関与と持分を報告企業のものとみなさなければならないとしています。さらに,報告企業の活動を指図する当事者が,他の企業が報告企業のために活動することを指図する能力を有している場合にも,同じであるとしています。そして,報告企業のために行動する関連当事者にあたる可能性のあるものの例を最終基準に含めることを仮決定しました。また,報告企業が関連当事者と共に,グループとして支配の要件を満たす状況に関する米国基準のガイダンス(Topic 810-10-25-44)と同様のガイダンスを最終基準に含めることについて暫定的に合意しています。

4.今後の予定

2010年4月に更新されたIASBのプロジェクト計画表(IASB work plan-projected timetable)では,連結に関するプロジェクトは,支配(IAS第27号の置き換え)と開示(非連結の組成された企業に関する開示を含む)の2つに分けられ,これらが別のスケジュールによって進められています。前者については,2010年第4四半期,後者については,2010年6月にそれぞれ最終基準を公表する予定となっています。

なお,この文中の仮決定等は全てIASBのホームページ等で公表された情報に基づくものですが,今後のIASB及びFASBの審議内容によっては,最終基準において異なる結果となる可能性がありますのでご留意ください。

こちらは、『週刊経営財務』2966号(2010年5月17日)にあらた監査法人企業会計研究会として掲載したものです。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

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