国際会計基準審議会(IASB)は2007年9月、米国財務会計基準審議会(FASB)との共同プロジェクトの一環として、改訂IAS1号「財務諸表の表示」(IAS1号)を公表しました。当該基準は2009年1月1日以後開始する事業年度から適用されています。
IAS1号では一般目的財務諸表の表示を扱っています。一般目的財務諸表とは、「自己の特別な情報ニーズに合わせた財務諸表の作成を企業に要求する立場にない利用者のニーズを満たすことを意図した財務諸表」であり、連結財務諸表のみならず個別財務諸表も含まれます。ただし、IFRSでは、個別財務諸表の作成義務については規定しておらず、企業が個別財務諸表を作成する場合の規定を示しているにすぎません。
IAS1号では、財務諸表の体系は以下のとおり規定されています。
(1)財政状態計算書(旧「貸借対照表」)
(2)包括利益計算書
(3)所有者持分変動計算書
(4)キャッシュ・フロー計算書
(5)重要な会計方針およびその他注記
2007年9月に改訂される前のIAS1号(旧IAS1号)からの主な変更点は以下のとおりです。
| 項目 | 旧IAS1号からの変更点 |
|---|---|
| 財政状態計算書 | 従来の「貸借対照表」から名称を変更 |
| 包括利益計算書 | 従来の損益計算書の項目の表示に加え、その他の包括利益を含めて表示(*1) |
| 所有者持分変動計算書 | 従来、資本直入されていたその他の包括利益項目に関して、その内訳表示を包括利益計算書へ移行 |
| キャッシュ・フロー計算書 | 特に変更なし |
| 重要な会計方針の要約及び注記 | 特に変更なし |
| その他 | 会計方針の遡及適用、財務諸表の遡及修正再表示、あるいは財務諸表項目の表示の組替えを行った場合、最も古い期間の期首時点における財政状態計算書を作成・開示 「少数株主持分」を「非支配持分」に名称変更 |
*1 ただし、二計算書方式(包括利益計算書を当期利益とその他の包括利益に分割し、当期利益を表示する損益計算書と、当期利益から始まってその他の包括利益を表示する包括利益計算書の2つを作成する方式)も認められる。
IFRSでは財務諸表の作成に当たっては、以下が求められます。
財務諸表は企業の財政状態、財務業績、およびキャッシュ・フローを適正に表示するものでなければなりません。IFRSでは、適正な表示の財務諸表はIFRSに準拠し、また必要な場合には追加的な開示を行うことによって作成されると考えられています。そのため、財務諸表に経済的実態の影響を適正に表示する方策としてIFRSのフレームワークの資産、負債、収益、費用の定義や認識要件に従った会計処理が求められています。
また、この他、財務諸表の適正な表示のために以下の事項も必要であるとされています。
① IAS8号「会計方針、会計上の見積もりの変更および誤謬」に従った会計方針の選択と適用
② 会計方針を含む表示情報の提供方法における「目的適合性」、「信頼性」、「比較可能性」、「理解可能性」
③ IFRSの規定に準拠するだけでは、特定の取引およびその他の事象や状況が企業の財政状態や財務業績に与える影響について、利用者が理解するためには不十分となる場合の追加的開示
財務諸表を作成する場合、経営者は継続企業として存続する能力を評価し、特別な場合を除き、継続企業の前提で作成しなければなりません。
仮に、経営者が企業の継続性に重大な疑問を生じさせるような事象又は状態に関する重要な不確定事項を発見した場合には、当該不確定事項を開示する必要があります。
企業はキャッシュ・フロー情報を除き、発生主義会計により財務諸表を作成しなければなりません。これにより、財務諸表ではフレームワークの定義および認識要件を満たした場合に、資産、負債、資本、収益および費用が認識されることになります。
財務諸表における表示および分類方法については、以下の場合を除いて継続して適用しなければなりません。
性質や機能が類似した項目区分に重要性がある場合には、財務諸表に個別に表示しなければなりません。また、類似しない項目については、重要性がない場合を除いて個別表示しなければなりません。
資産および負債、収益および費用は、基準もしくは解釈指針によって要求もしくは許容されていない限り、相殺するべきではありません。
財務諸表において報告される金額情報については、比較情報として前期数値を開示しなければなりません(基準または解釈指針が容認している場合や、異なる扱いを規定している場合は除く)。また、金額情報に加え、当期の財務諸表の理解に役立つ場合には、説明的・記述的な情報に関する比較情報の開示も必要となります。
*このQ&Aは、『週刊 経営財務』 2853号(2008年01月21日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2010年4月22日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。
印刷する