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KeyWord4 有形固定資産と減損会計

質問有形固定資産の会計,特に減損処理に関して日本の基準と何が違いますか。

答

有形固定資産は,国際財務報告基準(IFRS)ではIAS16号「有形固定資産」で規定されています。またその減損に関しては,IAS36号「減損会計」で規定されています。日本においては,減損は「固定資産の減損に係る会計基準」および同適用指針に従って処理されますが,減損以外の基本的な考え方や取扱いについては企業会計原則や連続意見書によることになります。

1.IAS16号と日本の現行の有形固定資産会計の相違点

(1)測定基準

日本基準における有形固定資産の測定は取得原価により行われ,減価償却により原価配分されますが,IAS16号では,信頼できる公正価値が定期的に入手可能な場合には,日本基準同様の取得原価ベースの評価のほかに,公正価値による再評価が認められています。
測定基準として再評価を選択した場合には,資産取得後,定期的に公正価値による再評価を行い,帳簿価額が増加する場合の評価差額は資本の部に、帳簿価額が減少する場合の評価差額は損益として計上されます。ただし、同一資産に関して以前に認識した評価差額を戻し入れる場合においては、過去に計上した範囲内で資本または損益で戻入れを行います。もし同一資産に関して、以前に費用として認識した資産の減少額が存在し、当該減少額を戻し入れる範囲においては、増加額を利益として認識します。同一資産に関して、資産の減少額が以前に認識した資本残高(再評価剰余金)の範囲内であれば、当該資本残高を減額します。

(2)減価償却方法の変更および耐用年数の変更

①減価償却方法の変更
現行の日本基準では減価償却方法の変更は会計方針の変更として取り扱われますが,IFRSではIAS8号で規定する見積もりの変更として取り扱われます。
なお、日本基準においても、2009年12月に公表された「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」により、2011年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる減価償却方法の変更について、見積もりの変更と同様に取り扱われることになります。

②耐用年数の変更
IFRSでは,耐用年数の変更は見積もりの変更として扱われます。すなわち,従来の減価償却計算で引き継がれた未償却残高を,変更後の耐用年数により当期以降の残存期間にわたって配分します。日本基準においても,同様に処理する実務が一般的ですが,臨時償却として,減価償却計算に適用されている耐用年数が,予見することのできなかった原因等により著しく不合理となった場合に,取得時に遡って耐用年数を変更したと仮定した場合の未償却残高への調整を,変更のあった期間の損益に認識する場合があります。
なお、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」によって、2011年4月1日以後開始する事業年度以後、当該臨時償却については廃止されます。

2.IAS36号と「固定資産の減損に係る会計基準」の相違点

有形固定資産について,他の資産または資産グループから概ね独立したキャッシュ・イン・フローを生み出す最小単位として資産をグループ化し,特定の資産または資産グループについて減損の兆候が認められた場合に減損の有無を判定し(減損の認識),計上すべき減損額を測定するという大きな考え方は,日本基準もIFRSも同じですが,主に以下の相違点があります。

資産の減損における会計基準の国際比較
項目 日本基準 国際会計基準
(IAS/IFRS)
米国基準
グルーピング 概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位 概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位 概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位
減損の兆候 評価する 評価する 評価する
認識テスト 割引前将来キャッシュ・フロー 回収可能額(売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方) 割引前将来キャッシュ・フロー
測定 回収可能額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方) 回収可能額(売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方) 公正価値
減損損失の戻入れ 戻入れなし 戻入れあり(のれん除く) 戻入れなし

出典:第11回企業会計審議会企画調整部会資料をベースに作成

(1)減損の認識

日本基準では,減損の兆候のある資産あるいは資産グループについて,その帳簿価額と割引前将来キャッシュ・フローを比較して減損の有無を判定し,減損が認識された資産あるいは資産グループについてはその回収可能価額まで帳簿価額を引き下げて減損損失を計算するという2ステップの手続をとります。一方,IAS36号では対象資産あるいは資産グループの帳簿価額を直接その回収可能価額との比較により減損の有無を判定し,その差額として減損損失を計算します。どちらも回収可能価額は,正味売却可価額(売却費用控除後の公正価値)と使用価値(割引後将来キャッシュ・フロー)のいずれか高い方と定義されています。

したがって,日本基準において割引前将来キャッシュ・フローとの比較の結果減損が認識されなかった資産あるいは資産グループについても,その回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には,IAS36号では減損が認識されるというケースも考えられます。

【例】A社のA製品製造のための製造設備の将来キャッシュ・フローの見積もり
  1年目 2年目 3年目
割引前CF 200 200 200
割引後CF(3%)(=使用価値) 200 194 188
  4年目 5年目 合計
割引前CF 200 200 1,000
割引後CF(3%)(=使用価値) 183 177 942

上記において,当該製造設備の帳簿価額が1,000であった場合には,日本基準では減損は認識されませんが,IAS36号では減損が認識され,58の減損損失の計上が必要となります。

(2)減損の戻入

日本基準では,一度計上した減損損失を戻入れることは認められません。一方,ISA36号では,減損の原因となった事実が,将来のある時点において存在しなくなったり、減少したりした場合には,過去に計上した減損損失の戻入れが必要になります。減損損失の戻入れには,対象資産について減損を最後に認識した時点以降,回収可能価額の算定に使用された見積もりに変更があったという事実が必要になります。その場合には,戻し入れ後の帳簿価額は、過年度において当該資産について認識された減損損失がなかったとした場合の帳簿価額(減価償却控除後)を限度として,変更された見積もりに基づく回収可能価額まで,資産の帳簿価額を引き上げ,その調整額は減損損失の戻入れとしてその期の収益として計上されることになります。

【例】B社においてX1年1月1日に取得したB製品製造のための機械装置(取得価額:2,000万円、残存価額:ゼロ、耐用年数:10年、減価償却方法:定額法)について、5年が経過したX5年12月31日(減価償却後の帳簿価額:1,000万円)に、500万円の減損損失を計上し、減損後の帳簿価額は500万円となった。回収可能価額は将来キャッシュ・フローの見積もりによる使用価値500万円を使用した。その後B製品の市場が拡大し,1年後のX6年12月31日時点で将来キャッシュ・フローを見積もり直したところ,使用価値が1,000万円に増加した。

【X5年12月31日の処理】 (単位:万円)
(借方) 減価償却費200(*1) (貸方) 減価償却累計額200
(借方) 減損損失500(*2) (貸方) 機械装置500

(*1) 取得価額 2,000万円 ÷ 耐用年数 10年=200万円
(*2) 帳簿価額 1,000万円 - 回収可能価額 500万円=500万円

【X6年12月31日の処理】 (単位:万円)
(借方) 減価償却費100(*3) (貸方) 減価償却累計額100
(借方) 機械装置400 (貸方) 減損損失戻入益400(*4)

(*3) 減損後帳簿価額 500万円 ÷ 残存耐用年数 5年=100万円
(*4) 
① 回収可能価額 1,000万円
② 減損損失がなかったとした場合の帳簿価額800万円(=1,000万円-減価償却費200万円)
③ 戻入後の帳簿価額は①と②の低い方を上限とするため、戻入額は②の800万円-現在の帳簿価額400万円=400万円

*このQ&Aは、『週刊 経営財務』 2859号(2008年03月03日)にあらた監査法人 企業会計研究会として掲載した内容に一部加筆・修正を行ったものです(2010年4月15日時点の最新情報)。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

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